名調教師・武田文吾が、管理した顕彰馬2頭の走りの切れ味を、「コダマはカミソリ・シンザ
ンはナタ」と比喩した名文句がある。その名の通り、彼のスピードと末足は群を抜いており、
早くから武田師の目に止まっていた。
東海道本線の新しい特急・新幹線「こだま」になぞらえて命名されたコダマは、新馬戦の圧
勝から、2歳・3歳で使うレースが決定され、すでにダービーまでの構想が確定した。重馬場
の皐月賞6馬身差圧勝で、彼の強さと、名前のインパクトと、額のきれいな流星は、一般の人
たちの人気も集めた。これはこれから何回か訪れる競馬ブームのはしりでもあった。ダービー
では8万の観客を集め、「トキノミノルの再来」とも評された。そして、その評価を裏切ることな
くレコードで勝利を収めた。
しかし、秋には脚部不安から調教不足に悩まされ、遂に本番まで調子を上げられず、菊花
賞を惨敗して三冠を逃し、有馬記念も負けた。その後、武田師は名馬の名を汚すことの無い
よう、無理なローテーションを組まず、5歳の宝塚記念勝利を最後にして、きれいに引退させ
た。その結果、コダマは優秀な繁殖牝馬に恵まれ、クラシックホースも輩出できた。 |